ぐるるるるる

洗濯機の横に小さい箱を置いている。ホープ(ヤニ)の箱ほどの小箱だ。
元はカフスかタイピンか何かがはいっていたものと思われる。
この小箱の中に“洗濯機から釣りあげられた小さい獲物”が捕獲されている。主にボタン。
今日、洗濯物を干しているときにシャツのボタンが一個とれていることに気づいて、小箱の中に指を突っ込んで漁った。捕獲されていればこの中にいるはずなのだ。
しかしシャツに残されたボタンと兄弟の契りを交わしたボタンは行方不明。似ているけれどもちょっと違うボタンをより分けたけれど、本物はみつからなかった。
小箱はこの瞬間だけのために存在しているというのに、このように役に立たないと存在意義を問いたくなる。たまにひっくり返したりして邪魔なので、行くアテのないその他大勢のボタンと共に打ち捨てたくなることがままある。
たった一個のボタンのために泣きをみることがないように、小箱は存在しているのだ。
結局、良く見ると全然似ていないけれども、パっと見は似ている風なボタンをチョイスしてつけてると、残されたボタンも糸のあたりがヨロヨロしていてひっぱったら取れそうだ。
また小箱に指をつっこんで“白くて3兄弟揃っている”という条件で捜索再開。
ちょっとガタイが良すぎるが、意気のいいボタン三兄弟がみつかったので任務にあたらせることとする。
つけたてのボタンをまたはずし、取れそうな二個を小箱に収め、三兄弟出動。
「よし」などとつぶやきながら作業を終えたが、洗濯機からたまに“コリ”とかいう音が聞こえていて、今洗っているシーツと一緒にボタンが一個はいって洗われまくっている気配がする。
またシャツのボタンがとれたときにはさっき小箱に収めたボタンが出動すると思われ、いつも小箱から3兄弟が選ばれているとすると、小箱の中には常に“はぐれボタン”が常駐することになる。
で、小箱に常駐しているはぐれたちは本来どこに存在すべきボタンたちなのか・・・・と考えてもしょうがないのでもういいが、最初に小箱の中にはいっていたボタンは一個だったはずなのにいつのまにか結構な数になっていることをちょっと不思議に思っている。