若干の静電気


昔、私は傾いていた。
これは分け目をサイドにとった髪型を死守するためで、なんでかわからないがアゴぐらいのボブカットで前髪をチラチラさせたテレサ・テンみたいな髪型が流行っていたときのことだ。なぜに女子はみんな傾いているのか?と男子に尋ねられたこともある。
そのほうが可愛く見えると思い込んでいたんだよ。悪いか。
最近、街角で傾いた娘っ子を見かけると“おー傾いとるねー”と声をかけたい衝動にかられる。懐かしいもんで。しかしイマドキの傾きは、いつも小首をかしげて横に傾いてた昔とは違い、どちらかというと上半身を前のめりにした前傾方向の傾きだ。
この寒いのに生足なのはご苦労な話だが、ご丁寧にみんなで「内股」を死守するのでこの傾きが生ずると思われる。
今日も色んなところで傾いている娘を見た。
スベっとゴム人形みたいに綺麗な足をしているのに、なぜか内股。そして前傾だ。
恵まれた体躯をしていながら、あえて不恰好な内股でありたい前傾。
なんだかもったいないですのぅ、と思いながらみていると、中にはあられもないO脚(見通し良好な)、象脚(太いのな)、サリー脚(くびれなしな)が紛れていて、よくみると恵まれない体躯の娘のほうが圧倒的に多い。
確かに、内股にしておくと、そのインパクトによってO脚のダメージは減らせる気がするよ。太いのは隠せないが“でもカワイイから”という言葉で凌駕できるような気もするよ。
メイドさんの格好した女の子は、確かに仁王立ちよりも内股ポーズのほうが“役作り”として望ましく思われるので、「萌えとかいっているヤツキモー」とかいっている娘にもそっち方面の情報はどこかしらで伝達されるものなのだと感慨にふけってしまった。

江戸時代に流行したダラりの帯、という帯をちゃんと結ばずに下をズルズルしたまま歩くスタイル。歌舞伎の衣装などにもあるが、あれは柳川の芸者がたまたまやってたのが“色気があっていい”ということで受けて、流行って、素人もするようになったものだ。
自分を“アチキ”と呼ぶのも、語尾に“ザマス”をつけてしゃべるのも(スネオの母ちゃん)、派生元は玄人(春をひさぐお姉さん)。
コンパニオン立ちという両足をそろえてちょっとつま先に角度をつける立ち方といい、全身から「MOTETAI」という野望をアピールする女子は、自分では知らずに水方面の流儀をとりいれるDNAがあるとおもう。
ステテテテテと内股のまま、すり足で走る娘をみたとき、私は業のようなもんを感じてちょっと怖くなりました。