срочно

キバナコスモス


最近、家の近くにガラの悪いラーメン店が乱立している。木造の建物に、ペンキで俺アートを施したようなイデタチの。
真っ赤な店舗に黒い手書き文字で「スープのコクに誇りあり」とか書いてあってその横を昇り竜がはいずっていたりする。「飲み干せない輩は去れ」とかも書いてあって、その美意識の収束点はスカジャンとか刺繍入り学ランとかを彷彿とさせる。
心意気みたいなもんを文字にして示してあるところとか。
外からチラ見するに、店内も殺気だっており、中の人もかなり気合がはいっている様子。文句言うなら食わんでいい的雰囲気を漂わせており、なんか怖くてはいれない。なんで命令とかされにゃいかんの。
ある日タクシーでそんな一軒の前を通ったらば、タクシーの運さんが「ココはいったことある?」ときいてきた。「ない」と答えると、「俺はいったけど、普通のラーメンがでてくるんだよねえ」という。
おいしいのか尋ねると、「まずくはないんだけど、特別うまくもないんだよねえ」という。
運さんは本気で不思議がっており、私も行きずりに同意した。
なんであんなに大上段から見下ろしているのかラーメン。

そんな、食べる前から腹いっぱいですな気配を察知したのか、油そばという食べ物が登場した。
初めて食べたがとにかく早い。
熱いうちにラー油と酢をかけて、熱いうちにかき混ぜて、熱いうちに食べ終えろということで作る人も食べる人もあわてずにはいられない。
まずスープを飲んで、次に麺だけを食べ、みたいな勝手に決められた作法はつけいる隙のないスピードだ。
酢にむせているうちにいつの間にか食べ終わる。
出汁は豚骨使っているね?とか判断する余地もない。
ラーメンのコアの部分だけが自分に注入されたような変な気持ち。
シナチクはいってた、ということだけ薄っすら覚えているが、それ以外の記憶がない。
油まみれの麺を頬張った直後だというのに、食後は清々しい気持ちだった。
何かにつけ油そばの面影が蘇る。油そばのことばっかり考えてしまう。
隠し味はモルヒネかもしれない。
吐き捨てるようなヤケクソな形状が好きだ。枯れた風情がインテリヤクザ風。