синий

何年か前に、朝顔の種をまいて育てた。夏の間中、一度も花をつけずにひたすら巨大化したその苗は、秋になっても枯れずに成長を続け、冬になろうかという頃にもの凄い数の蒼い花をつけた。長い蔓は垣根に上って、そのあと庭木にからまり、隣の家にまで到達していたため、「これは何の花なのですか?」と知らない人から聞かれたりしたほどだ。
「多分朝顔です」と私は答えていた。
内心、朝顔とは信じていなかったけれども、見た目はまるっきり朝顔だったので。だいたい、朝顔の種をまいたのも他ならない私だったので。育った苗は朝顔らしからぬ素行だったが。
その後にも、何度か朝顔を育てたことがあるけれども、あれほど珍妙な奇行に走った種はない。
なんらかの条件が重なって、あのようなミラクルが起きたのだ、と思っていたが、あのミラク朝顔はそのように開発された種であり、「ヘブンリーブルー」という嘘くさいがちゃんとした名前もあることが判明。
余裕で電線まで占領しそうだったあの種を、今年はそうとしってわざと仕入れてきた。
庭のどのあたりでミラクルを起こそうか、考えるとワクワクする。
どっかしらに摑まるところがあれば、どこまでも延びる蔓。
ヘブブルーちゃんを持ってすれば、近所中の木を気になる木にすることも可能なのだ。
ウヒヒヒ。
そのように、思いがけない成長を見せるヘブブルちゃんだが、思い通りにはならない、とも伝え聞く。
垣根を真っ青にする、なんてのも素敵なのだが、なにしろ花が咲くのは冬。
夏場にフサフサした蔓があっちゃこっちゃしている鬱陶しさに耐えられるだろうか?

朝顔はスマートな顔立ちなのに、淵にいくほど花色が濃く絞りになっているところなど、とても好色で淫靡なイメージを持っている。
昔見たエロ浮世絵の軒先なんかに行灯仕立てが描かれていたから?
すぐ種がついて枯れ方が壮絶だからか。
端から端まで垣根を春画に?!