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ここは安全(多分)


庭に穴を掘って、その土を使う。堆肥を作っていた場所なので、なかなかにフカフカして良好な土だ。大好物。
またその穴掘り場から土をとろうとスコップ片手に参上してみると、穴の中に落ちた細い枯れ枝に、トカゲがのっかって遊んでいた。
穴付近にトカゲのご飯になるようなものが存在しているのだろうか。できたらミミズは食べないでいただきたいのですが・・・などと思いつつ、しばし別の場所に移動したあと戻ってくると、突然に現場は緊迫したムードに包まれていた。
穴の中に、トカゲと、枯れ枝と、もうひとつ、長細い何かが動いている。
ヘービー!!
さっきまで、枝につかまって遊んでいたトカゲが突如として“エサになるかならないか”のピンチを迎えているではないか。
蛇はまだそんなに大きなものではなかったが、小耳に挟んだ情報によると、蛇の口はでっかいので自分の体よりも大きなエサも食べられるらしい。
ちょっとしたマムシでも、小鳥を丸々一羽飲み込むことができるというのだ。
ヤヴァイ。逃げろトカゲ。
しかしトカゲはマゴマゴしているし、私もどうしていいのかわからずただの野次馬化しており、現場はにらみ合いが続いた。
しばらくすると蛇がトカゲのまわりをぐるぐる旋回しはじめ、トカゲはますます硬直してどうにもならない。蛇は少しずつトカゲに近づいて尻尾のあたりから自分のペースに持ち込もうとしているが、トカゲのいた場所が「枝の上」という足場の定まらない場所だったことが功を奏し、バランスがとれないのでなかなか蛇のペースにならないのだ。
責める場所を変えようと蛇が移動したとき、“ちょっとまって、トカゲが蛇に丸呑みされる瞬間を見るなんてヘビーすぎよー!”ということに私はやっと気づき、自分の足元にあった石を蛇に投げつけてトカゲを援護した(つもりだった)。
石が命中した蛇の躍り上がる様が、マブタに焼きついて離れない。その跳躍力、その柔軟さ。絶対に敵にしたくない。
石攻撃に恐れをなして、とりあえず蛇は気まずい現場から退却したのだが、問題はその後。
私はトカゲを守りたいという気持ちもあったが、蛇を殺生する気もなかった。そのため、石攻撃はかなり中途半端なものであったと言わざるを得ない。
私は蛇に面が割れてしまい、敵意を持っていることを悟られた上に、へタレであることも露呈してしまった。
かといってトカゲも、私に恩を感じる風でもなくさっさと別の場所に移動していき、なんですかこれは、私は結局、蛇からもトカゲからも嫌われて敵を増やしただけの状況に。
さらに蛇がしけこんでいった先は、私がかねてからなんとかせねば、と思いつつ放置プレーをきめこんでいる元花壇・現ドクダミ畑なのだ。
ドクダミの、地上20センチぐらいの高さといい、根元はすかすかしていて葉が比較的多く大きいという特性。日よけ、雨よけに丁度よく、適度にエサもゲットできるという絶好の隠れ家ぶり。
もうここに手をつっこんでドクダミを刈るなんて無理、でも、ドクダミがある限り、蛇の現在地を把握することもできない、というますます困った状況に自分を追い込んでしまった。
そのエリアを通過するときは、爪先立ちで早歩き。そもそも蛇が一匹とは限らない。
子供のとき、家の近所で発見された大蛇は桜の木の上のほうにいたのだし。
私はいかなるときも攻撃しない!身を守るために最低限の備えをするのみです!と常任理事入りを蛇に訴える場が欲しい。トカゲは私を擁護せよ!
もう茂みという茂みがおっかないのでびくびくして暮らしているのだ。