夏の花

朝のうちに神社詣でが叶わず、どっぷり日が暮れてから強引に乗りこんだ。
人気のない夜の神社。マジコワス。
ガクブルしながら境内に近づくと、ガランガランと振り回すカネが白んで浮き上がっている。
すわ、これは私のニュー財布を祝福しているのかと思いきや、梁のところに蛍光灯がついていた。初めて夜にきたので知らなかった・・・照明ついていたんですな。
背後に林を背負ったその境内、もちろん近くには民家もあるが背の高い木に囲まれているのでムードが独特。自分の足音が反響してさらにそれに木霊がかえると、なんだか大人数のお供を従えてやってきたような気になるがそのお供って誰。
私が足を止めるとピタリと音もやんでまたポツンと森に取り残されるので、次第に財布よ実れ祈願という目的よりも、肝だめしの要素が色濃くなっていくのだ。
賽銭泥棒と見紛われて通報される恐れも捨てきれず、神隠しにあったりしてもかなわないのでとにかく急ぐのよ自分。
別に悪いことしているわけでもないのに、そういうことで境内まで全力疾走の私、賽銭を投げ入れて拍手を打ちまくるとその音がまた反響してやけに騒々しく、“今ここにバカがいまーす”と言いふらされている気分になるのだった。
なんとか成し遂げて帰宅。早速寿命の尽きた財布の具をニュー実り財布にうつしかえる。
久しぶりに長財布を選んでみたのだが、具もないのにデカいのがなんか空しい。
ヤケを起こして散財しないように自分に言い聞かせる。
大富豪の予感はまだ全然しないのだった。