海と毒薬と

ためいき?

夜中に若い乙女が外出するの危ない。若くない乙女だろうと男子だろうと安全とは限らない。
危ないのに、そうとわかっていて、やむをえず外出なのか気にせず外出なのか。
色々あるのでしょうが、だから殺していいということではないでしょうが、可哀想にとは思うけど、必ずしも同情は出来ないなあ、と思う事件が多いこの頃。
そんな簡単に人が命を落とすものかや、というのもあるし本当に防げなかったの?というのもある。
でもひとつひとつを全部、同じ世相で生きる者として受け止めると、とても耐えられない気持ち。
なるべく知りたくない。
それにしても、だ。
マンションで行方不明事件は「またですか」と思いながらも、続報を聞けば聞くほど他の事件とは違う味。

私は庭に生ゴミを埋めて簡易堆肥作り、という渋いことをやっているのでやんすが、穴を掘るたびに「これって・・・・」と思う。
幼稚園だかの娘の同級生を殺した事件では、殺した子供をボストンバッグにいれて実家までもっていき、穴を掘って埋めたという。
私が使っているシャベル、スコップは、最初は持ち上げるのも大変だというぐらい本職の植木屋のヲサンが使うようなゴツいもの。軽量なものはすぐひん曲がってしまってすぐ使えなくなるので、慣れたら重さもあるこちらのほうが実は使い易い。最近は重さも感じないぐらい慣れてきた。
それで、ただの黒土を掘り起こすときでさえ、自分がしゃがんで入れるほどの穴を掘るのは結構大変だ。
植木があるところには根っこがあって絡み合ってもいるのだし、廃材などの瓦礫が埋まっているところでは、すぐにコンクリート片や小石がでてきて掘り進めることは出来ない。
掘りやすいところは、すでに何度か掘って耕されているところ、つまり畑だとか花壇だとかになるけれど、耕されているということはまたすぐに誰かが掘り返すのであろうし、死体を隠す場所には適さないと思われる。
焼却するにしても場所と設備とが必要な上、独特な臭いというのがあるだろうし、そのままにしておいたらますます匂うだろうし、とりあえず埋めるしかないと一時的に埋めたのだろうか。
庭で死んだ野狸のお墓作るのもすんごい大変だった。
浅い穴だと別の動物にほじくられる可能性があるし、雨が降ったぐらいで露出してきてはいけないからなるべく広く深く掘ろうとするがままならない。
幼稚園児がはいるボストンバッグ一個といえど、完全に埋める穴なんてそうそう掘れるもんじゃない。
穴を掘るたびに私はそんなことを思っている。
大人一人を山に埋めるといったって、一体どんだけ掘るつもりなのか。どうやって掘ったのか。
そしてどうやって運ぶのか。
解体して少量ずつなら運べるというのか?匂いはどうなる?

肥料にするつもりの油粕を、うっかり蓋つきバケツの中で腐らせたときは大変だった。
朝起きて、二階の窓を開けたら庭から異臭がする。
なんとなくイオウっぽいそのにおいに、ハッと油粕の存在を思い出したから元凶にたどり着けたけど、こんな小さなバケツがこんなに強烈な匂いを放つもんか?というぐらい凄かった。
それで、それをどう処分したもんかと考えてやっぱり穴を掘って埋めた。
埋めたらすっきり。土中の微生物、バクテリアが匂いを吸収分解、翌年は埋めた場所に雑草が大盛況になった。
土の持つ、土に歩み寄ったものはすべて土とする養分とする、という威力にはいつも驚く。

セレブ奥さんが、旦那をワイン瓶でぶんなぐったあと、横倒したロッカーに、死んだ、というか殺された、というか殺した旦那を詰め込んで、匂い隠蔽のために「園芸用土」をぶっこんだ事件。
土の特性に気付いて利用を試みたのは確かにアイディア、でも、完全に土に還るほどになるには、雨風が必要。
嫌気(空気なし)の醗酵だけじゃ、大人の男を一人土に返すことはできないかとおもわれる。
室内じゃダメかと。雑草でいいから植物が根を張ることも必要だし、たまに混ぜ返すことも必要。
そして醗酵の進んだ土はなぜか「カサが減る」のだ。
たびたび土を買い足して、混ぜ返したロッカーに追加投入しないとダメじゃないだろうか。
ちなみに醗酵したら、ロッカーの中の土の温度は75度ぐらいまでなら余裕で上昇する。
ロッカーそのものが劣化するし(素材はよくある合板にみえた)、床も痛むしで、死体が処分される前に手に負えない惨事になりそう。しかもリビングで。

すると次は英会話の白人女教師が勤務外バイトの途中で殺されて、こちらは屋外ベランダのバスタブだかの中で今度は砂に埋められた。
私は大量の砂を屋外で扱ったことがないからわからない。そしてバスタブの底がどんな状態なのか。
死体から出るのは必ずしも水分だけじゃなく、血液も脂もあるだろうし想像がつかない。
血液や体液の中には塩分もあるわけだし。
ほどなく小蠅がブンブン言いはじめるだろうに。

埋めるのはすぐに思いつくけど、上手くはいかない、ということだ。
捨てるしかない。捨てるとしたら運搬、運搬のためには解体。

本当かわからないけど、体重70キロの男性の血液量が30リットルと書いてあるのを読んだ。
いつも水槽の水換えに使っているバケツが10リットル。
10リットルなら重いけど一人で持ち上げてウロウロすることが可能。
両手で20リットル持ち上げることも可能だと思う、でも、両手にバケツだとバランスが悪く、ムリに移動するとチャプチャプして床にこぼす率が激しく上昇するが。
0.75坪のユニットバスで120リットルの水がはいるらしい。
そう考えると、血液だけを別に取り出すことができれば30リットルぐらいは家の中でいくらでも処分はできそう。
でもどうやって?だ。
そして、失敗して床に30リットル血液こぼしたときにどれだけ凄惨なことになるんですか、っていう。
コップ一杯のミルクコーヒーこぼしたときでも一晩ゲロ臭で苦しみましたが・・・。

そしたらお次のバラバラ死体は洗濯機に切断部位をいれて脱水かけたという。
そのあと洗濯機はどうなったんだろうと思う。
水もいれつつ回しておけば、これで血を抜くことができるのか?
生活排水として血を捨てようってのか!

そして今回の事件。
同じフロアで?
死体を跡形もなく?
警察が外にいるのに?
何の落ち度もない娘さんが、防ぎようのない状況で?

とくにはしゃいだところのない静かなニュース番組でも、平然と「切断が」「頭部を」「下水に」「ゴミとして」とスプラッタな言葉が並列されていて怖い。でもそうとしか表現しようがないことが起っているわけで怖い。
それで一番怖かった言葉が「仙骨発見、二人分」。
二人分って?
ぞわー

前例を踏まえながら、死体遺棄は進化するんだろうか?
ただのニュースで、人は遺棄を学習してしまうんだろうか?
模倣する人がいたらどうなるの、と凄く怖い。
しかし、一番いい死体遺棄の方法はまだ決定されておらず、なぜかというと、
み つ か っ て い な い か ら ・・・・・。
よく考えたようでいて、大事なところがすっぽ抜けている犯人たち。
完璧にやられてたまるかよ。
こうなるとそのマヌケさが少しだけ救いに思える。
一方、そんな輩に人の尊厳を奪われた被害者の無念というのもしみじみ感じる。

オバケ怖い、モノノケ怖い、魂も霊も怖い、でも生きている人間の怖さ無限大。
海と毒薬、なんて思い出した。
手に握られていた小さな氷砂糖は誰のために?
警察犬がんばれ、超がんばれ。