ベネチアの鏝

きっと鏝よね・・・

幻でもハッタリでもなく、明らかにそこにあって前からずっとそこに確かにあって、自分にも当然見えているはずなのに、あるときまでまるで存在しないかのように意識の外にあるものってなんなの?
ちょっと前までの自分にはさっぱりわからないのに、突然ひらめいてハタと解決する現象なんなんでせう。

秋にはペンキに挑戦し、なせばなる精神が微妙に芽生えている私、一年の締めくくりということで、この忙しいのに「セメント」に挑戦してみた。
慌ただしい中やることじゃないというのはうっすら感じつつ、今やりたい、という意思がやるべきという決意になりやらないといけない、という思いつめっぷりでモルコンを大量仕入れ。
水と混ぜるだけでいいインスタントっぷりが熱い。
外壁に使ったタイルの残りがずっと庭に積み上げてあって、邪魔だしせめて場所を移動したいと思っていたけど、数もあるし重量もあるし自力では無理で。
どうすればこれが撤去できるかずっと思いつかなかったんだけど、どうも答えは超シンプルに「使ってしまえばいいじゃん」ではないか。
で、モルコン。
この寒いのに汗びっしょりで作業してみた。
あと1時間あればもっと完璧にできただろうに、「日暮れ」という敵に視界を奪われ若干ヨレっとした仕上がりに・・・・。
でもきっとこれは正しい。数も距離も超目分量だったうえ、箱一個分カウント間違えたのに、貼りたい面積=タイルの量でジャスト。別の言葉でギリギリともいう?気持ちよく終われた!
今凄く困っているのは、「あーあと一回やればもっと上手にできるのに」という向上心的なものが自分の中に芽生え、次なるモルコンの場を心が求めてさまよっていること。
タイルにも「伝統」があるですよ。
こぎん刺しだとか編み物だとかまくらめだとかみたいに、ヘリンボーンとか市松とか。
今回私はタイルの長方形を正方形っぽく使いたかったのと、目地をいれたかった(ベタ貼りするとタイルが足りないから)ため、縦3横3を交互に繰り返す3×3貼りでやんす。
ペンキの「刷毛」にはそんなに興味ないけど、セメント左官の「鏝」には凄く萌えを感じた。
「目地鏝」がこんな興奮を産むとは。
それはどんな慟哭か。さらっとたとえてみると、テトリス?。
テトリスをやる。テトリスをやる。やり続ける。と、世界の何もかもを並べて消してロケットを飛ばしたくなりますね?
四角四角隙間四角角角!
だんだんとスピードをあげながら並んでいくキューブ。
その四角と四角の継ぎ目、境界線、つまり「目地」の部分に指を押しあててツツゥーツッーとしながらニラニラし、この世のあらゆる理不尽と悲しみがスコンと一列ごと消え去っていく、アヒャッ!というかんじを想像してくだぱい。
右手に目地鏝をもって目地をならし、左手は添えてあるだけ、とみせかけて絶妙な力加減で鏝にタイルのラインを沿わせていて、そこには鏝でならされた美しい直線が産まれてまるで私を祝福するかのように!
ドーパミン放出中)


これを読んでいる鏝萌えの方(あるのかこのジャンル?)、ベネツィアン・モザイク 『SICIS』でググればいいじゃん。
床から天井までびっちり、洗面所をタイルづくしにしたいっつー野望が生まれたんですよ!!
3mm鏝を自らふるいたい!
どっちかというと、「セメント」を初体験する趣旨の無茶ぶりだったのにまさかの展開。
鏝に心を奪われた。
タイルがもっとチープだったら速効だったけど、高いのでふらっと開始してしまう心配はない。
いい「ベネチアンもどき」がひらめいたら決行、だな!
っていうかちょっとまって。
ベネチアの職人、どんな鏝使っているのかしら?興味あるわ・・・

そんなことでベネチアンだタイルだ鏝ラブだとポヤンとしたまま庭掃除していたら腕がかゆい。
ええ、茶毒蛾まみれなので間違えて触らないように隔離していた枝くずを、まちがえて素手で触ってしまったんです。ええ。
腕が熱を持っている。顔も痒いとおもう。
鼻水もたれている。モルコン担いだので筋肉痛もあり(軟弱)、年末寝込むという展開は避けたいのですが・・・・。
いい汗かいたのにこんなオチとはね。
とりあえず、ペンキ屋と左官屋から同時にスカウトされたら迷わず左官ですわ。